江戸時代の大長編人気作品『南総里見八犬伝』の笑いを研究した大学時代【日本文学科って何を勉強するところ?】
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こんにちは!
似顔絵うつブロガーの みさとです。
何気ない会話の中で ときに
「大学時代は〇〇を専攻していました」
「〇〇学科出身なので、
こういうの興味あります!」
と 大学時代の所属について
お聞きすることがありますが、
私の中には 毎回ある疑問が。
それって結局
何 勉強するところなん?
私の卒業した大学は
当時1学年が
約3000人の総合大学。
8学部19学科あったため、
他学科のことは
把握しきれていませんでした。
同じ学内を
ジャージを着て颯爽と歩く
オリンピック選手の学生。
振り返ると
青い瞳が綺麗な友人と
楽しそうに英語で談笑する学生や、
大きなバッグで
書道の道具を運ぶ学生まで。
みんな、
どんなことを勉強しているのだろう?
そこで今回は、卒業した
文学部 日本文学科についてお話しします。
研究対象は 約1400年分!『古事記』解読の隣で、ライトノベルを読む学科
そもそも
日本文学科とは何か?と訊かれたら
日本の文学について学び、
研究する学科!
とお答えします。
「日本文学」と一言にいっても
そのジャンルは幅広く、
新元号の元となったことで話題になった
日本最古の歌集『万葉集』や
日本最古の歴史書『古事記』から、
現代作品の『火花』(又吉直樹 著)や
ライトノベルに至るまで
およそ1400年分にも及ぶ
膨大な作品群の中から
自由に研究対象を選ぶことができます。
当時は
言語学の先生もいらっしゃったので、
方言の研究などもできました。
選択肢が多くて楽しそう〜!
でも、多すぎても
かえって
選ぶの大変なんやない?
そうなんです!
作品を読んでから決めようにも
そもそもの作品数が多すぎるのです…。
そこで 私の在籍した大学では
1〜2年生のときに
日本文学史をざっくり3つに分けたうち
興味のある年代の授業を2つ選ぶなどして
大まかに 興味のある年代を絞り込み、
2年生の後期で
所属したいゼミ(研究室)へ志願書を提出。
3〜4年生の2年間をかけて
専門分野を研究し
卒業論文を執筆する、という
仕組みになっていました。
ただし!
当時のゼミの数=教授の人数は14、
1つあたりの学生定員は 15名前後と
人気のゼミは かなりの狭き門!
志願書には
第10希望あたりまで書くのですが、
それでも間に合わず
定員の余ったゼミへ
泣く泣く所属することになる学生は
決して珍しくありませんでした。
夏目漱石を研究しようと思って
大学に入ったのに、
やっとのことで所属できたのが
『古事記』の解読をする先生のゼミだった!
なんてこともザラでした。
そのギャップ、時代にして
実に 1000年以上です!
『古事記』の注釈書を読む学生の隣で、
研究対象として
ライトノベルを読む学生もいる。
日本文学科は
幅広い研究対象に恵まれた学科でした。
文学の研究って、要は何するの?
日本文学者は国文学者とも呼ばれ、
研究では 作品内容から
「ここで筆者は
どんなことを言いたかったのか?」
「この作品は
世間にどのような影響を与えたのか?」
「現在この作品は こう解釈されているが、
本当はこういう意味があるのではないか?」
といったことなどを
作品や先行の研究論文、
そして
当時の文化的な資料などから
読み解いて論じることになります。
- 上代(飛鳥・奈良)…『古事記』『日本霊異記』など
- 中古(平安)…『源氏物語』『更級日記』など
- 中世(鎌倉・室町・安土桃山)…『平家物語』『方丈記』など
- 近世(江戸)…『東海道中膝栗毛』『おくのほそ道』など
- 近現代(明治以降)…『こころ』『人間失格』など
入学すると
こちらの文学史の区分に従って
希望する時代のゼミに所属し、
教授から
ご専門の作品について教わりながら
卒業論文の執筆に向けて
研究や発表を進めていくこととなります。
また 比較文学の分野では、
日本文学作品の特色を明確にするために
海外の文学作品も
一緒に読み比べて研究し、
論じる場合もあります。
みさと は何を研究したの?
私の卒業論文の題目は
「『南総里見八犬伝』の笑い」。
…ん?
どういう内容?
江戸時代 後期に
曲亭馬琴によって執筆された当作は、
古典で長編と言われる
紫式部の『源氏物語』よりも長く、
原文で
現在の文庫本10冊分に相当します。
『八犬伝』は「読本(よみほん)」という
比較的 硬い内容の小説になるのですが、
かた〜い内容ばかりが
28年間もの間 出版され続けたって
通常 読者はついて来ません。
そこで私は、
きっと箸休めとなる
笑いの要素があったに違いない!
という仮説を立てて、
それを研究したんです。
なるほど!
それで
結果はどうだったの?
研究は頓挫しました!
は?
そもそも 原文の どの部分が
当時の洒落や笑いの要素なのか
判断する材料が無かったんです。
しかも 江戸時代の文学は
日本文学史の中では
比較的新しい方なので
まだまだ先行研究や注釈書が
充実していません。
参照できる資料も限られ、
私事ながら 当時は
教員採用試験に
どうしても受かりたかったこともあり
この研究内容は渋々断念しました。
(…だったら もっと
早く気付かなかったの…?)
でも そこから気を取り直して、
登場人物たちが笑うシーンに着目。
作中で誰かが笑っている場面は
雰囲気が和むものと考え、
登場人物の
笑い方の違いや回数について考察しました。
ちなみに 結論としては
- 馬琴は「ほゝ」などの声を上げる描写よりも、表情による笑いの描写を多く取り入れている。
- キャラクターは、作中の登場回数に関わらず笑う回数の多い者と少ない者とで書き分けられている。
- 登場人物は、たとえ同じ身分同士であっても笑い方に差異があったり、異なる身分であっても あまり違いが確認できなかったりする。
- 馬琴は笑う描写にいくつかの型を作り、それらを登場人物の性格など内的要因に応じて使い分けている。
- 馬琴が用いた「笑い」は「優越の理論(悪意が込められた、相手を見下した際の笑い)」で説明できるものが大半だが、読者を惹きつけたい場面においては 効果的に「放出の理論(緊張によって張り詰めていたものが一気に解放されたときに起こる笑い)」も活用している。
の5点となりました。
なんとか
結論付けた訳やな!
日本文学科卒ならではの特技は?
特技として、
江戸時代以降
一般庶民向けに出版された
変体仮名(崩し字)の作品は
簡単なものなら 今でも読めます。
所属していたゼミの授業では、
江戸時代当時の原文と
現代の表記に直して
文庫本になっているものとを
同時に読みながら、
記載の異なる箇所を探すという
間違い探しをしていました
卒業してから
この力が役立ったのは
博物館へ
浮世絵を観に行ったとき。
おおよそは
何が書いてあるかがわかるので、
当時を生きた方と 近い感覚で
作品を
鑑賞することができました。
日本文学科の学生ならではの休日の過ごし方は?
「日本文学科ならでは だなぁ」
と感じる 学生時代の思い出は、
近世(江戸時代)がご専門の
教授をガイドに、贅沢な
神保町ツアーをしたこと。
自分も実際に
『白縫譚(しらぬいものがたり)』
という故郷・大分が登場する
作品を購入して、上機嫌で帰りました。
あとは
江戸時代の
文学作品を専攻していた関係で、
個人的に
歌舞伎や能、狂言を観に行ったり
江戸時代の文化や風俗に関する
展示を観に行ったりしていました。
当時 できたばかりの
渋谷ヒカリエで開催された
「渋谷亀博」にて、
市川亀治郎(現:猿之助)さんが
歌舞伎メイクを
ビオレのオイルで
落としていらっしゃるのを
知ったときは、
あまりの親近感に鳥肌が立ちました!
まとめ
日本分学科は
日本文学を学んで、研究する学科!
自分の読んできた作品は
日本文学史1400年間のうちの
ほんのわずかな
作品群でしかなかったことがわかり、
「読書せねば…!」と
追い立てられるように
本を読んだ4年間でした。
私の文学知識は
このときの4年間が
大きな基盤となっています。
いろんな学問分野に
興味があるので、
もし 大学時代の専攻について
お話ししていただける方は
みさとまで ご連絡ください〜!