アスペルガー症候群の少年は、学校を辞めて コーヒー焙煎の店を始めた【『コーヒーは ぼくの杖』ブックレビュー】

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こんにちは!
似顔絵うつブロガーみさとです。

本日は 最近読んだ本、
岩野 響・開人・久美子
『コーヒーは ぼくの杖』
について
感想を交えながらご紹介します。

あらすじ

岩野 響さんは
小学校3年生のとき、
発達障害の1つである
アスペルガー症候群と診断されました。

中学生になると
学校生活が徐々につらいものとなり、
最終的に
登校しないという結論を下します。

学校へは行かず 父のもとで
家業の染色を手伝うさんは、
導かれるように
コーヒー豆の焙煎と出会い
のめり込んでいきます。

本書は、さんが
コーヒー豆の焙煎士として
HORIZON LABO(ホライズン ラボ)
を開業するまでの話を、
・響さんご本人
・お父さん(開人さん)
・お母さん(久美子さん)

のそれぞれの視点で記録した
オムニバス形式
インタビュー記事です。

淡々とした語り口に好感触

語り口が良いです。

自虐めいたり
悲観しすぎたりしていないし、
かといって
すごいでしょ、とも主張しない。

淡々と 時系列に沿って
3人それぞれの立場から
起こったこと、感じたことを
語っていらっしゃる筆致

好感を覚えました。

響さんの苦悩は、今も 私の課題

人はどこから方法を学んでいくのか
これには私も
幼少期から悩んできました。

中学校は、小学校と空気がまったく違っていた。なにか、目に見えない“型(かた)”がある感じで、入学と同時に生徒たちはその型を敏感に察知し、受け入れ、その上で、型が要求する役柄を演じ切る演技力があることを周囲にアピールしなければならないようだった。(中略)それにしても、みんなはいったい、だれに型を教わったのだろう

岩野 響・開人・久美子 著『コーヒーはぼくの杖』三才ブックス(2017) 本文 P68より

ぼくは、他人になにかを習うということが絶望的に不得意だ。

岩野 響・開人・久美子 著『コーヒーはぼくの杖』三才ブックス(2017) 本文 P17より

どうして
1回 説明を聞いただけで、
1回 見ただけで
みんな
サッと実演できてしまうのか

私は ずっと
不思議でしょうがありませんでした。

それは大人になってからも続き、
イベント運営準備などで
配置図進行表を見せられても
まったく覚えることができず
何度も確認したのに
スケジュールの書かれた紙を
見ながら進行
して
それでも
順序を間違えてしまう

でも そんな苦悩も
「不登校になった」という事実に隠れて
つい最近まで 気付けずにいました。

さんが こうして
言葉にしてくださったことで、
そんな自分の苦悩まで
透かして見ることができました

「ふつう」に振る舞いたい

さんのことを、
父・開人さんは
「まじめ」と表現します。

正しくありたい、と毎日思っていた。そして、中学生の僕は、いつも正しくはなれなかった

岩野 響・開人・久美子 著『コーヒーはぼくの杖』三才ブックス(2017) 本文 P68より

しかし そのまじめさ
不得意なことに向かうとき、
さん自身は抑圧されてしまう。

さんの中心には いつも
「ふつう」でありたい
「正しくありたい」、という
意識が働いていました。

 

オープンした
HORIZON LABO
取材を受けるにあたり、
発達障害の公表
強い拒否感を示したさん。

発達障害を認めることは、
「ふつう」を諦めること。

私自身も 今現在
この呪縛と戦っているが故に、
多感な10代であったなら
より つらいだろうなと感じました。

父の視点、母の視点

これまで私が読んできた
発達障害系の本の多くは、
・医師による解説書
・当事者による体験談
・家族による経験談

のいずれかでした。

自分の発達障害のことを
理解しようとすると、
それぞれ
情報を断片的に持ち寄って
頭の中で
構成し直す必要があります。

でも 本書では
同じエピソード
・当事者である響さん
・お父さんの開人さん
・お母さんの久美子さん

3人の視点から
それぞれ語ってくれている
ので、
スムーズに
理解が深まりました

さんの特性を
好意的に受け止めようとする
母・久美子さんと、
社会の厳しさを伝えることで
「生きる場所を与えたい」、
父・開人さん。

3人の思いが それぞれ
文面から伝わってくる
からこそ、
胸が痛くなる場面もありました。

発達障害の活かし方の指南書、では ない

本書で印象的だったのは、
苦悩するさんと
付かず離れずの距離を保ちながら
一緒に並走
する、
ご両親の姿でした。

きっと、染色でも服飾でも洗い物でも、なんでも良かったのです。にも、自分で選び取り、勝手に追求し、完成させ、「自分で手に入れたんだ」という経験を持たせなければいけない、と、私たちは無意識のうちに考えていたのだと思います。

岩野 響・開人・久美子 著『コーヒーはぼくの杖』三才ブックス(2017) 本文 P174より

父の手際も、やはりすごかった。(中略)店舗デザインから始まり、照明テーブルガス工事塗装コーヒー豆のパッケージまで作ってしまった。ひょっとしたら一睡もしてなかったんじゃないかと思う。

岩野 響・開人・久美子 著『コーヒーはぼくの杖』三才ブックス(2017) 本文 P133〜4より

ご両親の向き合い方は、
そう簡単に
ノウハウとして
真似できるものではありません

ただ、
このような向き合い方に到るまでに
悩み、衝突してきた過程は、
私たちに 大きな気付きをくれます。

まとめ

子どもとの向き合い方
発達障害との付き合い方
ヒントをくれる良書でした

ただ、3人の視点から
何度も同じエピソードが語られ、
これといった結論も無いので
「結局どうしたらいいのか」
を求める方には
退屈に感じるかもしれません

しかしながら、
中学校に行かない決断をした
さんとご両親
悩んだり衝突したりするさまが
飾り気なく描かれている
のには
好感が持てます。

さんのコーヒー焙煎
ご両親服作りなど
それぞれのお仕事に対する
こだわりも垣間見えますので、
ものづくりがお好きな方
何かを探求するのがお好きな方にも
お楽しみいただける内容です。

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